エコーを用いて頸動脈の断面をみる検査です。高血圧や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、メタボリック症候群などで動脈硬化が発症し、進行していきます。動脈硬化は心筋梗塞や脳梗塞の原因となりますが症状がなく進んで行きます。頸動脈エコーを行えば、早い段階で動脈硬化が見つけられ、治療の効果判定も行えます。

心臓から送り出された血液が、全身へ向かって流れていく血管が動脈です。動脈の壁は三層構造になっていて、血液に触れる最も内側の内膜は、一層の内皮細胞で敷き詰められています。内膜の働きは、血の固まりがつくのを防ぐのと、血液の中のいろんな成分が壁に入り込むのを防いでいます。人の体は細胞からできており、細胞は年齢とともに老化します。もちろん内皮細胞も老化します。動脈硬化とは血管の老化で、誰にでも起こるものですが、その程度が強いと病気として現れます。糖尿病になるとあらゆる細胞の働きが悪くなります。高血圧も内皮細胞の働きを悪くします。タバコを吸ったり、ストレスを感じると血液の中に活性酸素が発生し、活性酸素は内膜を傷つけます。しかし活性酸素はビタミンCやビタミンE、ポリフェノールやリコピンなどによってすぐ処理されます。食事の内容が良いと活性酸素による内膜の傷害はわずかですが、食事の内容が悪いと内膜はひどく傷つけられます。傷ついた内膜は血液の中にあるアデポネクチンというたんぱく質で修復されますが、内臓脂肪はこのアデポネクチンを減らしてしまいます。内膜が傷つくと、そこを通ってLDL(悪玉)コレステロールが内膜の下に入り込んでいき貯まっていきます。HDL(善玉)コレステロールはLDLコレステロールと結合し、LDLコレステロールが内膜下に侵入することを防いでくれます。従ってHDLコレステロールが少なくても動脈硬化は進みます。内膜の下にLDLコレステロールが貯まってくると免疫細胞の一種であるマクロファージが処理しますが、処理した後に線維質のシコリを残していきます。このシコリの固まりや処理されないLDLコレステロールにより血管内へ盛り上がりができてきます。これがプラークと呼ばれます。プラークの表面も内膜で覆われていますが、(処理されていないLDLコレステロールが多いなど液状成分の多い)質の悪いプラークでは、覆っている内膜が破れます。そうすると(出血した際に出血を止める成分である)血小板が働き、内膜に覆われてない部位に付着し、血栓(血の固まり)を作り、血管を詰まらせてしまいます。これが冠動脈で起これば心筋梗塞、脳血管で起これば脳梗塞になります。内膜が破れることなくプラークが大きくなれば血管を狭くし(狭窄が作られ)ます。これが冠動脈に起これば、狭心症を呈してきます。

動脈硬化は部位による程度の差はありますが、全身に起こるものなので、心筋梗塞や脳梗塞が起こるような状態であれば、頸動脈にも動脈硬化が起こってきています。冠動脈や脳血管を調べるには造影剤を使ったCTscanやMRI が必要なので、まず頸動脈エコーで動脈硬化の評価を行うことが好まれます。

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